- 2018年07月25日
- こまブログ
私が使っているのは、職業用の直線縫いミシン。
和裁士だった私にとって、ミシンは産業革命だった。
初めてミシンを買った時、夢のような機械だと感動したのを覚えている。
着物の仕立ては、ほとんどが直線縫い。
同じ直線縫いなら、手で縫うよりも ミシンの方が断然早い。
ちゃんと設定すれば、何時間でも同じように縫ってくれる。
疲れることも、縫い目が変わることもない。
何故、着物の仕立てにミシンを使わないのか。
和裁所にいる頃から疑問に思っていた。
「使ってはいけない」と言われて、従っていた。
和裁は手縫いが当たり前なんだ!。という、暗黙の了解と、
疑問を口にする事すら許されない空気があった。
同じような納得のいかない疑問は、洋裁学校にもあった。
洋服を仕立てる時、「手縫いをしてはいけない」と言われた。
先生曰く、洋裁はミシンを使うのが当たり前だ、と。
その時は「何故⁉」と先生に聞いた。強く聞いたのには理由がある。
時代は進んでいるし、ミシンの機械も進化している。
設定さえ間違えなければ、手縫いと同じように縫えるミシンもある。
洋服であれ、ミシンのない産業革命以前は手縫いしかなかった。
同じ布を縫って仕立てる作業なのに、ミシンだけにこだわるのは何故か。
そこまで聞いて先生の答えは「そういうものだから」。
学校というシステムにがっかりしたのは、この瞬間だった。
洋服が日本に入ってきたのは明治時代。
洋裁の技術と一緒にミシンが輸入されて、洋服はミシンで作ると思い込んでいる。
和裁も洋裁も布で服を仕立てる事に違いはない。
和裁は手縫い、洋裁はミシン、なんて決まりは始めから無い。
より速く、より多く、人の手の限界を超えるには機械が必要だった。
高度成長期と言われたスピードを重視する時代に、
何か大切なところで道を間違えてしまったのかもしれない。