No264 和裁と洋裁

「和裁と洋裁で何が違いますか?」

元和裁士だと言うと、よく聞かれる質問。

一言で答えるには難しい質問なんだけど。

あえて答えるなら、「文化が違う」だと思う。

 

服を仕立てる工程は、大きく分けて2つ。

1、布を切る。=裁断

2、つなげる(縫う)=仕立て

洋服も和服も同じ服だから、工程は変わらない。

でも、方法や考え方は全く違う。

 

布は貴重だから、無駄なく使おうとするのは変わらない。

無駄なく使う事に対しての考え方に違いが出る。

 

洋服は、着る人がその服を長く着られるように仕立てる。

布の量を最小限にしながら作る。

仕立てる時、その服を着る人を重視して体に合うように仕立てる。

本人に仕立てられた服を、他人が着ることはない。

物は物として、服を作るためだけに使われる。

 

和服は、使われる布が素材として長く使えるように仕立てる。

同じ布を、違うものに作り直して最後まで使えるように作る。

仕立てる時、次に仕立てる時の布を残しながら仕立てる。

ほどいて縫い直しをすれば、誰でも着れるようになる。

物に寿命があるかように、布は大切に使われる。

 

どちらがいいとか、悪いとかではなくて。

物を大切にしたいと思った時の考え方が違うだけ。

洋服は、体に合わせる為に布を曲線に小さく切る。

和服は、布をリサイクルしようとするから鋏を使わない。

長い歴史の中で培われた文化が違うのだ。


  • こまブログ カテゴリー