No106 職人とは

和裁士をしていた頃に言われたことがある。

「同じものを1000個作ったら、どんな人でも職人になれる」

聞いたときは、ふわっと受け流していた。

でも、考えてみたら、その通りだと思う。

 

「石の上にも3年」という言葉がある。

3年間を日にちにすると、1095日。

仮に月に2日休んだとして、毎日続けると1000日。

単純に計算して、毎日同じ物を1つ作るとしたら。

それだけ作ることが出来るなら。その人は間違いなく職人。

それが一日で出来上がるような”物”でなくても

3年間何かに打ち込んだとしたら。自分の中に得るものは大きい。

3年間という時間は短いようで、けっこう長い。

 

ずっと同じ事を続けるには、いくつかの壁がある。

嫌になるときもあるし、やめたくなる時もある。

悩むときも、迷うことも。途中休んだとしても。それでも。

職人になれる人は自分が続けようと思ったことをやめられない。

続けられることは、やっぱり「好きだから」。

自分の中にある気持ちに嘘がつけないから。

自分にしかわからない使命感みたいなものに逆らえない。

 

自分の中に積み重ねていたものが1000日を超える時、

名前のない職人に、その時すでになっている。

その人の結果に対して与えられる評価が『職人』

職人になりたい人や職人になろうとする人は多いけど。

そうして始めたことを1000回続けられる人は少ない。

もし続けられたら。気が付かずに1000回を超えていたら。

その人はそれだけで立派な職人。


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