No67 糸の不思議

糸はよく絡まる。

元を正せば、1本の糸なのに、ちょっとした事で絡まる。

絡まった時、イラついて発作的に引っ張ると、もう解けない。

こぶのようになって、塊になってしまう。

 

塊から出ている糸を引っ張ってもこぶは解けない。

そんな時は、片側からゆるみを入れて少しづつほぐす。

決して焦らず、緊張を解くように一つずつほぐしていく。

そうすると、ちょっとしたきっかけで、また1本に戻るのだ。

 

どうしても解けない時は、やむなく切って繋ぐ。

けれど、結び目には節が残る。

同じ1本の糸でも、結び目は弱くなるし、障害にもなる。

1本の糸はなるべくなら切らずに使いたい。

絡まった時の対処を間違えなければ、1本の糸なのだから。

 

糸をほぐしながら、人間関係みたいだ。と、思った。

どうしようもなく絡まってしまったら、焦りは禁物。

落ち着いて。落ち着いて。深呼吸しながら。

ゆっくり丁寧に、適度のゆるみを入れながら糸をたどる。

そうすれば、切らずに一本の糸に戻せる。

対処さえ間違えなければ。元は、1本の糸。

イラついたり、焦ったりしなければ、切らずに済む。

一度切ってしまったら、結び直さなければ戻らない。

それは、とてもとても、厄介な事になる。

 

糸は、時々ちょっとした事で絡まって。

何か心の奥深いことを教えてくれている。

”頼むから絡まらないで。もう焦ったりしないから”

そういう祈りは、ちゃんと聞いてくれるみたい。

糸って、不思議。


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