No68 職人の言葉

『やりかたがちがうんにゃ』

 

何かを聞くと、いつもそう言われる。

標準語だと「工程が違う」「方法がある」などなど。

たぶん、それらに関係する全ての意味を含んでいる。

 

玄関前の駐車場スペースに、コンクリートを打ってもらいました。

コンクリートが入る日に見に行きました。

状態は、ぷにぷに。ぷるぷる。でした。

それが、二日程度でとても頑丈なコンクリートになるなんて。

表面もすべすべ。するするとした面に。

 

左官屋さんの仕事は面白い。

とても地味な仕事。家が建てば、見えなくなる基礎部分。

キッチリカッチリ水平にコンクリートを敷き詰める。

木造の家の下には必ず左官屋さんの仕事がある。

 

今回は目に見えて残る場所。やり方が違うそうだ。

上に家が建つのか、車が乗るのか。

見える部分には、表面がすべすべになる化粧仕上げになる。

話を聞けば聞くほど、奥が深い話になっていく。

 

ぷにぷにのコンクリートは、全部同じに見える。

だけど、乾いて見ると色が違って仕上がっていた。

「やり方が違うから」

それは、季節によっても変えていると言う。

夏場の暑い時期と、冬の寒い時期。

同じ配合で打ってしまうとうまくいかず、固まらないそうだ。

 

どんな環境でも同じように仕上げる。

だけど、環境によってやり方は変えている。

 

いつも「同じように」仕上がっているのが当たり前なんだけど。

当たり前が通るようになるには、時間と経験が必要なのだ。

『やりかたがちがうんにゃ』その一言が。

とても簡単にきこえる言葉の裏に、経験と勘が詰まっている。

 


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