No296 日本の黒

黒い服と言えば、一番に思いつくのは喪服。

お葬式や法事など不祝儀には黒い服を着る習慣がある。

黒には何かしら不幸のイメージがつきまとっている。

着物の喪服は白の家紋が入った黒の無地。

黒の喪服には「喪に服する」という意味が込められている。

 

結婚式で着る親族の女性の正装で、着物には「黒留め袖」があった。

帯から上は喪服と同じ黒。加えて当時はお歯黒をしていた。

裾には縁起の良い華やかな柄があるが、正座をすると喪服のようになる。

男性の正装は、黒の紋付と羽織、袴を着ける。

全員が正座をしているお座敷では、喪服を着ているように映った。

 

西洋の文化を調べると結婚式に黒を着る習慣は全くない。

お祝い事や華やかな場面で、とにかく黒は嫌悪されていた。

正装に黒が使われるようになったのは、ごくごく最近のこと。

服は文化を表していて、文化の違いは色にも表現されている。

明治時代、初めて日本の結婚式を見た西洋人を想像すると。

文化の違いは衝撃的で、異様な光景に映ったに違いない。

 

一口に黒色と言ってもいろんな黒がある。

緑に近い黒、赤に近い黒。比べると違いがある。

絹の素材に染めた時、違いが出るのも黒の特徴。

結婚式やお葬式、生活に密着した服に黒を使ってきた文化があって、

布地に様々な黒色を染められる技術を育ててきた一面がある。

親しみやすい日本の黒。

日本の文化は、身近なところに息づいている。


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