No192 絹(きぬ)

日本語で絹。

英語はsilk(シルク)、イタリア語でseta(セータ)

シルクロードは文字通り、中国から絹を運んだ道のこと。

布の素材の中で一番高価な素材。

太古の昔から存在する天然素材の絹。

生産が難しく、希少価値の高い絹。

大量に作れない理由の一つは原材料にある。

 

絹の原材料は蚕(かいこ)という虫の糸。

蚕は蛾の一種で、卵から幼虫になり成虫になる。

芋虫のような幼虫が成長してさなぎになる時に糸を吐く。

さなぎの周りに繭を作ってその中でさなぎになる。

糸はその繭を茹でて取り出すことが出来る。

 

蚕の糸は切れにくく丈夫だけど、1匹から撮れる糸は細い。

着物を1着作るには約三千個の繭が必要。

それだけの蚕が茹でられて殺されて布が作られている。

養蚕農家で、蚕を数える時、「1頭、2頭…」と数えるのは、

蚕の命を大切に思ってきた人達の想いが込められていると思う。

 

大量に絹を作るには大量の蚕が必要になる。

蚕のエサは桑の葉のみ。

良い糸を吐く蚕は繊細で、飼育はたいへん難しい。

2か月程度で成虫になるけれど、季節によって品質は変わる。

大量に安定的に糸を作るには、別の方法が必要だった。

糸の歴史を調べると、自然の糸を作ろうとしてきた人の足跡が見える。

蚕の糸を目指して良い糸を作ろうとした人の努力がわかる。

 

日本で養蚕をしている場所は、今はもう、ほとんどない。

蚕を殺さなくてもいいい糸で、今の服は作られている。

天然の絹は正絹(しょうけん)と言う。

数は少ないけれど、色や手触りは最高にいい。

やっぱり絹は布の中で王様だ、と思う。


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