No298 「お直し」と「リフォーム」
- 2019年10月08日
- こまブログ
私がしていることは和服や洋服の直しですが、
よく聞かれる質問が「着物を洋服に直せますか?」
結論から言いますと、それは直せません。
着物を洋服にすることをお仕立て直しとは言えないからです。
「直す」という言葉の中にはいろんな意味がありまして。
「お直し」はいろんな意味を含んでいる、ざっくりとした言葉です。
「お仕立て直し」は、着物が普段着だった過去の言葉。
着物をほどいて布にした状態から元の着物に作り直すことを指します。
サイズを変えたり、衿や衽の汚れを隠したり。
着物が主流だった頃、お仕立て直しは着物を新しく蘇らせていました。
お仕立て直しは和裁士が得意としていた仕事です。
着物に仕上がっているものを洋服という違う服にする場合、
服の形そのものが全く違うので、全く0の状態からデザインをして、
デザインをした型紙を元に洋服を組み立ててしあげることになります。
着物の布という材料を使って、お仕立てをすることと同じです。
それは「直す」と言うより「作り替える」作業になります。
洋服のデザインをして型紙を作る技術は、特殊な技術です。
着物を洋服に作り替える「リフォーム」という言葉が生まれました。
時代が変わって、着物を着る人や仕立てを知る人も減りました。
着物を同じ着物に仕立て直す人もいません。
いつしか言葉だけが残ったのではないかと思うのです。